52歳のプロトレイルランナーである私は鍛錬期には月間800km走りますが、最近特に感じているのは歩く力の衰えです。スピードが明らかに以前より遅くなり、小さな段差にも頻繁につまずき、ざっざっと足を擦る音がし、8歳の娘と散歩してもついて行けません。13年飲み続けて居るアスタビータのお陰で、普通の方よりは老化スピードが遅いものの、若い頃のようには体は動かなくなってきました。このため最近はトレーニングとして歩くことを見直しています。
歩く時に心がけたいのは腸腰筋群を意識することです。この筋肉は主に脚の引き上げの際に使う筋肉で、場所は腰骨の出っ張りの下の部分にあたります。この部分を意識しながら素早く太腿を高く上げ、ストライドは短く、背筋を伸ばし、軽く胸を張って、大きく腕を振り歩きましょう。普段からこの歩き方を心がけると、冒頭のような歩きの衰えは解消されますし、脚力の衰えを抑制するだけでなく、競技のパフォーマンスアップに必ずつながります。さらに歩きの途中で少しでも良いので階段や坂を加えてみましょう。上りで筋肉に僅かでも刺激を入れることで、脚力の衰えを更に防ぐことができるからです。
私自身もこの歩き方を取り入れると、以前よりもランニングフォームが改善しパフォーマンスアップに繋げることができました。歩くことはどの年齢、どの体力レベルの方にも、大きなプラスの効果を与えるのです。

有名アスリートも歩きを積極的に取り入れているようです。2000年シドニーオリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さんは、オリンピック本番に向けて最初に取り組むのが長時間歩くことでした。また58歳で世界最高峰のトレイルランニングレースUTMBを制覇した、イタリアの伝説のランナー、マルコ・オルモ選手も、休養日には積極的に歩くことを推奨しています。歩くことで疲労回復させながら、走ることでは鍛えられない筋肉に刺激することで走力を高めることができるそうです。
さらに歩くことのメリットはセロトニンの発生により脳が活性化され、前向きな心を引き出し精神的に安定することです。私もコロナ禍で先行きの不安等からストレスが溜まりますが、最近は妻と近所を散歩するようにしています。普段話せない本音や互いの悩みを語り合い心の平静を保つ秘訣となっています。
歩くことで大きな可能性が広がります。もう一度歩くことを見直してみてはいかがでしょうか。
