
「チーム100マイル」というトレイルランニングチームを率いて今年で11年目に入りました。
このチームは100kmを越える厳しいトレイルランニング大会を目指すもので国内でも上位30%に入る実力者ばかりですが、年齢の幅も広く老若男女20歳代から60歳代までと様々。




私が全盛期に世界大会で成果をあげることができた練習内容をベースにメニューを組んでいるために、メンバーにとって根を上げるほどに辛く厳しいものですが、一人では乗り越えられない内容もチームの力でやり切り、自信をつけこれまで多くの国内トップトレイルランナーを排出してきました。
超長距離のトレイルランニングレースは、体力だけでなく、マネジメント能力やメンタルの力が試される要素が大きく、努力次第で本人も想像しなかったような成果を上げることができます。
過去にはほとんど運動経験がなかった方が、地道な努力で国内トップレベルまで到達したケースがあるなど、本人のやる気次第で夢が広がる競技だと思っています。

練習会では私自身も毎回一緒に走ることを信条に頑張っています。
このチームを率いた43歳の頃は、自分が最も強く胸を貸す感覚だったのが、年々若い選手たちに少しずつ追い越され、54歳の現在は若手に引っ張ってもらう日々。
しかし逆を返せば、こうした国内トップ選手と練習ができているうちはまだまだ頑張れると自分自身に言い聞かせながら毎回必死に彼らに食らいついています。

厳しい練習ほど不思議な一体感が醸成され、長時間の練習時など走りながら互いの悩み事などを語りあったり、疲れていても楽しい話題に爆笑したりと苦しくも振り返ればいつも最高の時間が流れます。
人生のなかで一つのことに没頭できる時間は実はそう長くはありません。
多忙な仕事や子育てなどやり繰りしながら国内トップレベルを目指す彼らと過ごす時間は前向きなエネルギーに溢れ、私自身大きな力をいつも貰っています。何としても還暦まで彼らと切磋琢磨できることが今の私の目標でもあります。

*鏑木毅さんの連載エッセイ「LIFE is FUN」は今号が最終回です。2年間のご愛読ありがとうございました!