コロナ禍も3年目に入り、巷では社会不安から精神疾患が増えていると言われています。以前から指摘されているように、ランニングは体の健康だけでなくメンタルヘルスにも良い効果があるようです。プロトレイルランナーである私にとって、走ることは仕事ですが、何事も思い通りにならなくても健康でいられるのは、日々のランニングのお陰だと感謝しています。

 走ることで得られる効果は、単に心身の健康を保てるだけではありません。脳が活性化され、頭が鍛えられることにも注目されはじめています。そのメカニズムとは、ランニングは脳の前頭前野という主に思考を統括する部分の血流をとりわけ促進させ脳の能力を高めるそうです。

 今年で日本経済新聞にて「今日も走ろう」という連載記事を掲載していただき5年目になります。毎週欠かさず書くことにはプレッシャーが伴いますが、実は記事全体の9割くらいは走っている時にアイデアが浮かぶのです。パソコンの前で「よし書くぞ」と張り切ってもなかなか筆が進みませんが、不思議なことに走り出すと最初の10分くらいでポンとアイデアが浮かび、残りの50分で文章の構成を練り上げ、1時間後には文章の大部分が出来上がります。また走り終えた後に集中力が高まり、ランニング後はデスクワークが捗ります。

 走っている最中には苦しく、そんな感じに物事を考える余裕などないと言われますが、ペースを落としたり、時折歩きを入れる「インターバルジョギング」を心がけることで考える余裕が生まれます。そしてポイントは走る前に課題を明確にし、走りながらそのことを考え続けることです。時には走る前には想像すらできない奇抜な解決法等も浮かび、脳がフル回転で活動していることが分かり自分でも驚かされます。

 さらに私の場合には、文章作成や講演会で話す内容を考える際には時速8km~10kmの比較的ゆっくりペースで、逆に新しい企画や斬新なアイデア等は坂道ダッシュなどのハイスピードで追い込んでいる時により顕著に頭に浮かびます。



 走ることは心の平静を保つだけでなく、脳を積極的に鍛えたり、様々な思考法の源泉になっています。無心で走る時間も大切ですが、是非とも日頃の課題などを考えながら走ることも試してはいかがでしょうか。きっとあなたの人生をより輝かせてくれるきっかけになると思います。